馬や鹿などの動物は生まれてすぐに歩けるようになりますが、私たち人間は歩くどころか首が座るのに2~3カ月を要するほど他の動物よりもゆっくりと成長していきます。そのため、赤ちゃんにはまだ人間として考えて行動するという脳が十分に機能しておらず、外界の刺激に対して反射という行動で身を守るように出来ています。これを原始反射と言います。
人の胎児や赤ちゃんは出産の時に時に上手に体を使って参道を通ってきたり、飲み方を教わらなくてもおっぱいを飲みます。こうした動きは生きるために人の本能に備わっている反射(刺激に対して思考を介さずに動きを起こす)によって可能になります。
熱いヤカンを触ったら考える間もなく手を引っ込めたり、不意にボールが飛んできたら咄嗟に避けたり防御の姿勢をとるという経験があると思いますが、その時には「熱いから手を引っ込めよう」とか「ボールが来たから体をこうしてこっちに避けよう」なんて考える間も無く動作を起こしていると思います。それが反射です。こうした反射の中には胎児や赤ちゃんの頃に使われるいくつかの特徴的なパターンがあります。それらを原始反射と言います。
たとえば、
・大きな音がした時にギュっと身を固める
・背中をなぞるとキュッと身体を反らす
・おっぱいが口に入ると自然と吸う
・足の裏を触れるとキュッと指を曲げるなどです。
これらは全て原始反射による動きで、赤ちゃんが誰に教わらずとも生きていけるために考えることなく自然と動けるようになっているのです。
代表的な原始反射
・モロー反射
・恐怖麻痺反射
・TLR緊張性迷路反射
・ATNR非対称性緊張性頸反射
・STNR対称性緊張性頸反射
・ペレーズ 反射
・ギャラン反射
・パーマー反射(手掌把握反射)
・足底プランター反射
・バビンスキー反射
・探索反射
・吸啜反射
・パラシュート反射
などがあります。
赤ちゃんはこうした原始反射を利用しながら、自分の身体を守ると同時に、人間の成長に必要な動きや感覚を身につけて発達していきます。
原始反射は通常2歳くらいまでに統合されて出なくなると言われていますが、実際には2歳を過ぎても原始反射が残存していることがあります。大人の人にもその影響が見られる方は珍しくはないのです。
そしてこの原始反射は思考を介さない領域の動きゆえにコントロールが効きません。そのため残存していると身体の使い力が上手にコントロールできず力加減の調節や動きの協調性やバランス感覚などにも影響を与えてしまうことがあるのです。