夏の冷房による「冷え」や、雨の影響、季節の変わり目などによって「自律神経」が反応し、色々な部位に痛みが出やすくなっています。なかには「痛み=内臓が悪い」というテレビの刷り込みで、自ら不安感を増幅させてしまい、痛みのみならず精神状態まで悪化させて様々な症状をつくってしまうケースもあります。
今回のニュースレターの目的は「痛み」というものへの理解と、向き合い方を知っていただき、必要以上に恐れすぎないようにしながら、正しく対応できるようになっていただくことです!
痛みとは
腰が痛い・膝が痛い・肩が凝るなど、誰もが経験したことがある痛みは、痛みの出ているところが感じているのではなく、脳が感じています。
例えば腰痛は、腰から神経を通じて痛みを知らせる信号が脳に届いて、はじめて脳は腰に痛みを感じます。
つまり、痛みは脳が感じているのです。
その痛みには
・組織の異常を知らせる痛み
・機能の異常を知らせる痛み
・身体の声としての痛み
があります。
組織の異常を知らせる痛み
まず、痛みの役割の一つに、身体に生じた異常や異変を知らせるというのがあります。
骨折や切り傷などで身体が刺激を受けると、「身体が傷ついた」という情報が発生します。その情報は電気信号に変換され、神経を伝って脳に届きます。脳がその情報を認識して初めて、「痛い」と感じるのです。
例えば骨折など外傷を負った時には強い痛みが伴います。これは骨折を最善最適に治すためには安静が必要だからです。もし痛みの感覚がなかったら、骨が折れているのにコレまでと同じように身体を使ってしまいます。痛みがない=骨折部に問題がないということではなく、患部では炎症が起こっているので、ますます炎症が強くなっていきます。骨も曲がってしまうかもしれませんし、肋骨や骨盤の骨折では、場合によっては命の危険にさらされてしまうかもしれないので、こうしたリスクから身を守るために、痛みという感覚が存在しています。
これは病気による痛みも同様ですが、組織の異常を知らせる痛みの場合、痛みの部位と原因部位が一致していて、通常は痛みの原因となった部位が治ると、痛みも消えていきます。
機能の異常を知らせる痛み
多くの人が経験したことあると思うのですが、腹痛や腰痛で病院で検査をしてもその痛みのある部位には何の組織的異常はみられないのに生じている痛みです。
例えば胃が痛くて検査したら
・胃に潰瘍があった→組織の異常を知らせる痛み
・何にも異常がなかった→機能の異常を知らせる痛み
と考えられます。
このケースでいう機能の異常は、胃腸の働きが低下、あるいは過活動になってしまうことで起こります。組織に病変はないけど、機能が正しくないために痛みとして感じられます。
肩こりや腰痛も同じです。筋肉や靭帯に損傷はないけど、筋肉が緊張したり、血流が低下して神経が酸欠状態になることで痛みが起こります。一般的な運動器(関節・筋肉)や神経の痛みは、自律神経の影響と関節の動きが本来の機能を失っていることで起こります。
足をくじいてかばって歩いているうちに、腰が痛くなるなども、腰が悪いのではなく、足の機能低下によるものと考えられます。
体の声としての痛み
色々なところに行っても良くならない痛みの多くが体からの声です。体からの声を無視すると、体は次から次へと別な症状を作ってメッセージを送ってきます。
以前、重症の腰痛患者さんを施術したときに、何をどうやっても痛みが全く変わらなかったので、以前僕が勤務していた整形外科に一緒に連れて行ってMRIを撮ってもらいました。すると腰椎に少しヘルニアが出ていたので、病院からは入院を勧められました。その日は一旦帰宅して入院の準備をしてくるように言われ、その時点でその方は仕事を辞める決意をして、病院の会計待ちの間に仕事場に電話をかけて退職の意向を伝えていました。
すると不思議なことに、その直後から痛みも痺れも嘘のように消失し、会計の時には「今はもう驚くほど何ともないから入院は見送ります」といって帰ってきました。
この方はブラック企業で超過勤務にサービス残業、パワハラという状況の中で限界だったけど、仕事を辞めるという決断は出せなかったのです。入院という事態になって、初めて仕事を辞める決断が出せました。体は「もうその職場環境が限界である」ということを教えてくれていたのです。この方のケースのように、その人が抱えている問題の本質に直面化すると、長い間苦しめられてきた症状が嘘のようにその場で消失してしまうことが起こることを数多くみてきました。
こうしたケースは特別な事でもなく誰でも経験していると思います。
学校に行きたくなくてお腹が痛くなる、連休になると頭痛が出なくなって、月曜日になると再発するといった例は体の声によるものです。
ストレスが多い・言いたいことを言えない性格の人ほど体の声としての痛みが出やすい傾向にあります。
また、これは心理的なことばかりではありません。砂糖の摂りすぎや腸の冷えすぎ、過食などからも体の声としての痛みは起こります。
痛みの見分け方
メディアが不安を煽るので、背中が痛くなったらすぐに「内臓の病気?悪い病気?」って考えてしまったり、手がしびれただけで、「脳梗塞?脳の病気?」って心配される方がいますが、本当に危うい信号としての痛みは非常に稀です。もちろん軽視しすぎてはいけませんが、すぐに大病に結び付けるのはストレスを増やして、他の不調を作り出すことになってしまいます。
痛みや痺れが起きたら大半は運動器(筋肉・骨格)か血流障害・神経の酸欠のどれかです。ここでは恐れすぎる必要のない痛みの出方と、病院に行って一度見てもらった方がいい痛みの出方についてお伝えします。
組織の異常からくる痛み
・骨折・打撲・捻挫・座礁・切り傷・やけどなど
・多くは外傷なので受傷したきっかけがある。
機能的な問題からくる痛み
・姿勢・動き・負荷などによって痛みが出る
・温めるたり安静にしていると楽になる
・気圧や気温の変化で出る
・自律神経からくる痛みが多い
例えば
・腰と足と首が痛いといったように痛みがあちこちに同時に出る
・気温や気圧の変化で出る
・ストレス発散した後に軽減する
体の声からくる痛み
・特定の部位がずっと痛い
・ストレス環境から離れると軽減する
・薬、マッサージ、鍼治療・整体など様々な取り組みでも効果が出ない
〜病院で診てもらった方がいい痛みの出方〜
・痛みの部位が腹部など内臓で出ている
・痛みが体の動きに伴って出るわけではなく、じっとしていても痛い
・これまでに体験したことがないようの強い痛みが急に出た
・夜中寝ている時にも痛みが出てくる
・痛みが軽減する姿勢がない
・強い痛みが引かず、ずーっと続いている
・痛み以外の自覚症状がある
(めまい・片半身のしびれ・麻痺・嘔吐・尿や便の異常など)
これらがいくつも重複しているとしたら、運動器以外の問題かもしれないので念のため医療機関を受診しましょう。
もちろん、「機能的な異常」や「体の声」としてもこうした症状は出ますので、極端に不安にならずに、安心材料程度に病院を受診されてみることをお勧めします。